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男性更年期のテストステロン補充療法|効果・費用・リスクを薬剤師が解説

男性更年期のテストステロン補充療法|効果・費用・リスクを薬剤師が解説

男性更年期のテストステロン補充療法|効果・費用・リスクを薬剤師が解説

LOH症候群(男性更年期障害)と診断され、テストステロン値が基準を下回っている場合に検討される代表的な治療法がテストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)だ。

ただしTRTは「誰でも受けられる」治療ではなく、適応の確認・リスクの把握・定期的なフォローが必要になる。この記事では効果・費用・リスク・向いていない人の条件を薬剤師目線で整理する。


TRTとは

TRTは、低下したテストステロンを外部から補充することで、LOH症候群の症状改善を目指す治療だ。

対象となるのは主に:

数値だけでなく、症状との組み合わせで総合的に判断される。テストステロン値が低くても症状がない場合や、症状があってもテストステロン値が正常な場合は適応にならないことがある。


国内で使用できる製剤

注射製剤(保険適用あり)

国内でLOH症候群の治療として保険適用が認められているのは、エナント酸テストステロン(筋肉注射)のみだ。

外用薬・経口薬(自費)

日本では外用ジェル・クリーム・経口薬は国内承認されていないため、使用する場合は自費診療となる。

なお、医療機関でのTRTとは別に、国内の薬局・ドラッグストアで薬剤師から購入できる第1類医薬品のテストステロン配合外用剤(グローミンなど)も市販されている。ただし医療機関で行うTRTとは別物であり、LOH症候群の標準治療として位置づけられているわけではない。購入する場合は薬局の薬剤師に相談してほしい。

海外製テストステロン製剤の個人輸入は品質管理の問題があり、副作用被害救済制度の対象外となる場合がある。自費診療でもクリニックから正規に処方されたものを使用することを勧める。

期待できる効果

TRTによって改善が期待される症状:

効果が現れるまでの期間の目安

症状・指標改善目安
性欲・気分3〜6週間
気力・活力4〜12週間
筋肉量3〜6ヶ月
骨密度6ヶ月〜2年

※個人差が大きく、上記はあくまで参考値だ。一般的に3ヶ月以上の継続が必要とされている。3ヶ月ごとに症状・血液検査(テストステロン値・ヘマトクリット・PSAなど)で効果と安全性を評価し、継続するか判断するのが標準的な流れだ。効果が認められる場合は長期継続となることも多い。


TRTのリスクと副作用

TRTには以下のリスク・副作用が報告されている。定期的な血液検査によるモニタリングが必要だ。

多血症(赤血球増加)

最も注意が必要な副作用の一つ。テストステロンは赤血球産生を促進するため、血液が濃くなり(ヘマトクリット値の上昇)、血栓・脳卒中・心筋梗塞のリスクが高まる可能性がある。定期的な血液検査でヘマトクリット値を確認し、上昇しすぎた場合は投与量の調整や休薬が必要になる。

前立腺への影響

テストステロンは前立腺肥大を悪化させる可能性がある。また、活動性の前立腺がんがある場合はTRTを原則行わない。治療前にPSA(前立腺特異抗原)検査を行うのが基本だ。

ただし「TRTを行うと前立腺がんになりやすくなる」というエビデンスは現時点では確立されておらず、前立腺がんのない人に対して新たにがんを引き起こすリスクは高くないとされている。

心血管疾患への影響

TRTと心筋梗塞・脳卒中リスクの関係については研究結果が一致しておらず、現時点では明確な結論は出ていない。心血管疾患の既往がある場合は主治医と十分に相談した上で治療方針を決める必要がある。

不妊リスク

TRTにより精子形成が抑制される可能性がある。外部からテストステロンを補充すると、脳からの精巣への分泌指令(LH・FSH)が抑制され、精子産生が低下する。

挙児希望がある場合はTRTを避け、hCG療法(精巣に対して自分でテストステロンを産生するよう刺激する注射治療)などの代替治療を検討することが多い。hCG療法は不妊リスクを抑えながらテストステロン増加を目指せる可能性がある。

その他の副作用


TRTを受けられない・慎重な判断が必要な人

以下に当てはまる場合はTRTが禁忌または慎重適応となる:
  • 前立腺がんの既往または疑い(禁忌)
  • 挙児希望がある(不妊リスクのため原則避ける)
  • 重度の前立腺肥大
  • 多血症・血栓症の既往
  • 重篤な心疾患・肝疾患
  • 睡眠時無呼吸症候群(重症)

費用と保険適用

保険適用の条件

注射製剤(エナント酸テストステロン)は、LOH症候群の診断がついた場合に保険適用で使用できるケースがある。ただし保険適用の判断は医師・施設によって異なり、自費診療のみ行うクリニックも多い。

項目保険適用自費診療
製剤エナント酸テストステロン注射注射・外用ジェル・経口薬など
費用目安注射1回数百〜1,000円程度(3割負担)クリニックにより異なる(3,000〜10,000円/回程度)
検査費別途3割負担全額自己負担
受診先によって費用が大きく変わるため、複数のクリニックで費用・治療方針を確認してから選ぶことを勧める。

治療の流れ

  1. 泌尿器科・メンズヘルス外来を受診
  2. 問診・AMSスコア評価・身体診察
  3. 血液検査(テストステロン・PSA・血算・肝機能など)
  4. LOH症候群の診断・TRTの適応確認
  5. 注射開始(2〜4週間に1回)
  6. 3ヶ月後に効果評価・定期的な血液検査でフォロー

TRTに向いている人・向いていない人

評価項目向いている人向いていない人
テストステロン値基準を下回っている正常範囲内
症状複数の症状が数ヶ月以上続く症状が軽微または一時的
挙児希望なしあり(代替治療を検討)
前立腺問題なし(PSA正常)前立腺がんの疑いあり
生活習慣改善試みても改善しないまだ試していない

まず生活習慣の改善(睡眠・筋トレ・食事・禁酒)を試み、それでも改善しない場合にTRTを検討する流れが現実的だ。TRTを始めた後も生活習慣の改善を並行することで、より良い効果が期待できる。

生活習慣改善の具体的な方法はテストステロンを自然に増やす方法の記事を参照してほしい。LOH症候群の診断基準やチェックリストは男性更年期チェックリストの記事にまとめている。

まとめ


よくある質問

Q. テストステロン補充療法(TRT)はどんな治療ですか?

A. テストステロンが低下している場合に外部から補充することで症状の改善を目指す治療です。主にLOH症候群(男性更年期障害)の治療として行われます。

Q. TRTは保険適用になりますか?

A. 条件を満たせば保険適用になるケースがあります。国内では注射製剤(エナント酸テストステロン)が保険適用で使用できます。ただし自費診療のみ行うクリニックも多いため、受診先で確認してください。

Q. TRTの費用はどのくらいかかりますか?

A. 保険適用の場合は3割負担で注射1回あたり数百〜1,000円程度が目安です。自費診療の場合はクリニックによって異なり、注射1回あたり3,000〜10,000円程度のケースが多いです。

Q. TRTで不妊になりますか?

A. TRTにより精子形成が抑制される可能性があります。挙児希望がある場合は治療前に必ず医師に伝えてください。代替治療(hCG療法など)が選択されることがあります。

Q. TRTの副作用は何ですか?

A. 多血症(赤血球増加による血液粘度上昇)・前立腺肥大の悪化・浮腫・注射部位の痛みなどが報告されています。定期的な血液検査とフォローアップが必要です。

Q. TRTは一生続けなければなりませんか?

A. 症状や検査値によって異なります。長期継続する人もいれば、生活習慣改善と組み合わせることで中止できる人もいます。定期的に効果と副作用を評価しながら医師と継続可否を判断します。自己判断での中止は症状再燃につながるため勧めません。

Q. TRTはいつやめてもいいですか?

A. 自己判断での中止は勧めません。TRTを中止するとテストステロン値が再び低下し症状が戻ることがあります。中止のタイミングは医師と相談して決めてください。


【薬剤師より】TRTは「テストステロンを増やせば元気になる」と安易に考えて始める治療ではない。不妊リスク・多血症・前立腺への影響は実際に起こりうる副作用であり、定期的な血液検査なしに続けるのは危険だ。必ず専門医の管理下で行ってほしい。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。治療については医師にご相談ください。