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前立腺肥大の症状と対策|市販薬・処方薬・受診タイミングを解説

前立腺肥大の症状と対策|市販薬・処方薬・受診タイミングを解説

前立腺肥大の症状と対策|市販薬・処方薬・受診タイミングを解説

「最近トイレが近い」「尿の勢いが弱くなった」「夜中に何度も起きる」——こうした悩みを持つ中高年男性の多くに、前立腺肥大症(BPH:Benign Prostatic Hyperplasia)が関与している可能性がある。

前立腺肥大症は加齢に伴う良性疾患で、60歳以上の男性に非常によく見られる。この記事では症状の見分け方から市販薬・処方薬の違い、受診のタイミングまでを薬剤師の立場から整理する。

前立腺肥大症は「良性疾患」であり、前立腺がんに直接変化することはない。ただし症状が前立腺がんと似ているため、PSA検査による鑑別は重要だ。

前立腺肥大症とは:有病率と基本知識

前立腺は膀胱の出口を取り囲む、クルミ大の腺組織だ。加齢とともに肥大し、尿道を圧迫することで排尿に関するさまざまな症状を引き起こす。

有病率は年齢とともに急増し、組織学的な前立腺肥大は50代男性の約50%、80代では約80〜90%に認められる。ただし症状があって治療が必要なケースはそれより少なく、日本泌尿器科学会のガイドラインに基づくIPSS・前立腺容積・尿流量のすべての基準を満たすものは60代で約6%、70代で約12%とされている。

症状の分類:排尿症状と蓄尿症状

前立腺肥大症の症状は大きく2種類に分けられる。

排尿症状(voiding symptoms)

前立腺が尿道を圧迫することで生じる症状だ。

蓄尿症状(storage symptoms)

膀胱への影響や過活動膀胱との合併で生じる症状だ。

排尿症状と蓄尿症状は同時に起こることが多い。夜間頻尿については前立腺肥大症以外の原因(過活動膀胱・睡眠時無呼吸症候群・心不全など)も考えられるため、症状だけで自己判断しないことが重要だ。

IPSS(国際前立腺症状スコア)で自己評価する

IPSSは排尿症状の重症度を数値化する世界標準の質問票で、以下の7項目に0〜5点で回答する(合計0〜35点)。

チェック項目症状の例
残尿感排尿後も尿が残っている感じがある
頻尿排尿後2時間以内に再びトイレに行きたくなる
尿線途絶排尿中に尿が途切れることがある
尿意切迫感尿意を我慢できないことがある
尿勢低下尿の勢いが弱い・細いと感じる
腹圧排尿尿を出すために力まないといけない
夜間頻尿就寝後に起きてトイレに行く回数

スコアが8点以上で日常生活に支障がある場合は、泌尿器科への受診を検討してほしい。

市販薬・セルフケアの選択肢と限界

市販薬(OTC)

八味地黄丸・牛車腎気丸(漢方薬):排尿困難・頻尿・夜間尿などに対して使用される漢方薬で、薬局で入手できる。軽症のBPHに対して一定の使用実績はあるが、中等度以上の症状への効果は限定的だ。

ハルンケア等:排尿を助けることを目的とした市販薬だが、作用は限定的で前立腺の肥大そのものには働かない。

ノコギリヤシ(ソウパルメット)サプリ:前立腺症状への効果を謳うサプリメントとして広く流通しており、一部の小規模研究では症状改善が報告されている。しかし大規模臨床試験ではプラセボとの有意差が確認されておらず、泌尿器科学会のガイドラインでも積極的な推奨はされていない

生活習慣の見直し

生活習慣の見直しは薬物療法の補助として有効だが、これだけで中等度以上の症状を改善するのは難しい。あくまで症状の悪化を防ぐ・軽減する手段として取り組んでほしい。

前立腺肥大とEDの関係

前立腺肥大症の患者ではEDの合併率が高いことが知られている。加齢だけでなく、下部尿路症状の重症度が高いほどEDも起こりやすい傾向がある。これは前立腺・膀胱・陰茎への血流や神経支配に共通する背景要因があるためと考えられている。

タダラフィル(ザルティア)はBPHの排尿症状とEDの両方に効果が期待できるため、ED併発例では特に有力な選択肢となる。EDについては「ED治療薬3種類比較」も参照してほしい。

処方薬:薬剤師が解説する主な治療薬

処方薬は主に3種類に分かれる。

薬の系統代表的な薬剤名効果が出る早さ主な特徴
α遮断薬タムスロシン・シロドシン等数日〜2週間(速い)尿道の筋肉を弛緩させ排尿を改善(第一選択薬)
5α還元酵素阻害薬フィナステリド・デュタステリド3〜6ヶ月(遅い)前立腺を縮小させ長期的な進行を抑える
PDE5阻害薬タダラフィル(ザルティア)数日〜1週間下部尿路を弛緩させる。ED併発例にも有効

α遮断薬(第一選択薬)

前立腺・膀胱頸部の平滑筋を弛緩させ、尿道の閉塞を軽減する。投与後比較的早期(数日〜2週間程度)から排尿症状の改善が期待できるため、BPHの第一選択薬とされている(PMID: 18231614)。

代表的な薬剤:タムスロシン(ハルナール)、シロドシン(ユリーフ)、ナフトピジル(フリバス)

主な副作用:起立性低血圧(立ちくらみ)、射精障害(逆行性射精)、鼻閉。特に高齢者や降圧薬を服用している場合は低血圧に注意が必要だ。

5α還元酵素阻害薬(5ARI)

テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素を阻害し、前立腺を縮小させる。効果が出るまでに3〜6ヶ月程度かかるが、前立腺容積の縮小・急性尿閉リスクの低減・長期的な疾患進行の抑制という点でα遮断薬より優れている。特に前立腺容積30mL以上の患者で有効性が高い。

代表的な薬剤:フィナステリド(プロスカー)、デュタステリド(アボルブ)

注意点性欲低下・勃起障害・射精量減少などの性機能への影響が報告されている。AGA治療薬(ザガーロ・プロペシア)と同成分だが、BPH適応薬とは用量・製品名が異なる点に注意。また妊娠可能な女性は取り扱いに注意が必要だ(経皮吸収・催奇形性リスク)。

重要:5ARIを服用していると前立腺がんの腫瘍マーカーである「PSA値」が測定上、約半分(50%程度)に低下するという特性がある。健康診断・人間ドックでPSA検査を受ける際は、必ず医師に5ARIを服用していることを伝えてほしい。伝えなければ前立腺がんの見落としにつながるリスクがある。

α遮断薬+5ARIの併用療法

両薬剤の組み合わせは単剤より優れた症状改善と疾患進行抑制効果が示されており、中等〜重症・前立腺容積が大きいBPH患者に推奨される(CombAT試験)。

タダラフィル(ザルティア)

PDE5阻害薬であるタダラフィルはED治療薬(シアリス)と同成分だが、BPH適応の製品名はザルティアだ。下部尿路平滑筋を弛緩させる作用があり、BPHの症状改善に有効とされている。EDを併発している男性には排尿症状とEDを同時に対処できる選択肢となる。

注意点:硝酸剤・NO供与剤との併用は禁忌。重度の腎機能障害・肝機能障害では慎重な投与が必要だ(主治医・薬剤師に確認すること)。

薬物療法で改善しない場合:手術療法

薬物療法で症状が改善しない場合、尿閉を繰り返す場合、または膀胱・腎臓への悪影響が懸念される場合には手術療法が選択される。

代表的な術式として以下がある。

手術療法については泌尿器科専門医への紹介が必要となる。

受診すべきタイミングと受診科

以下に当てはまる場合は泌尿器科への受診をすすめる。

PSA(前立腺特異抗原)検査は前立腺がんとの鑑別に重要だ。50歳以上の男性は定期的なPSA検査を受けることが望ましい。

夜間頻尿については前立腺肥大症以外の原因も多いため、「男性の夜間頻尿の原因と対策」も参照してほしい。

よくある質問

Q. 前立腺肥大症はどんな症状が出ますか? 主な症状は「排尿症状」と「蓄尿症状」に分かれます。排尿症状には尿の勢いが弱い・尿が出にくい・残尿感などがあり、蓄尿症状には頻尿・夜間頻尿・尿意切迫感などがあります。症状の程度はIPSS(国際前立腺症状スコア)で評価されます。

Q. 前立腺肥大症は何歳から増えますか? 組織学的な前立腺肥大は50代男性の約50%、80代では約80〜90%に認められます。ただし症状があって治療が必要なケースはそれより少なく、60代で約6%、70代で約12%とされています(IPSS基準)。

Q. 前立腺肥大の市販薬はありますか? 日本では八味地黄丸(漢方薬)やハルンケアなどの市販薬があります。ただし市販薬の効果には限界があり、中等度以上の症状がある場合は泌尿器科への受診をすすめます。ノコギリヤシサプリは臨床試験でプラセボとの有意差が示されていません。

Q. 前立腺肥大の処方薬にはどんなものがありますか? 主にα遮断薬(タムスロシン・シロドシン等)と5α還元酵素阻害薬(フィナステリド・デュタステリド)があります。α遮断薬は排尿改善が速く、5ARIは前立腺を縮小させ長期的な進行を抑えます。EDを併発している場合はタダラフィル(ザルティア)が両方に効果を示す場合があります。

Q. 前立腺肥大はがんになりますか? 前立腺肥大症(BPH)は良性疾患であり、前立腺がんに直接変化することはありません。ただし前立腺がんと症状が似ているため、PSA検査による鑑別が重要です。定期的な検診を受けることをすすめます。

Q. 前立腺肥大で受診すべきタイミングはいつですか? 尿が出にくい・夜間頻尿が週に何度もある・残尿感が強いなど日常生活に支障がある場合は泌尿器科への受診をすすめます。また尿が全く出なくなる「尿閉」は緊急受診が必要です。