男性の性欲低下の原因|40代からのリビドー減退とテストステロンの関係を薬剤師が解説
「最近、性欲が湧かない」「昔と比べて明らかに減った気がする」——そう感じている男性は思っているより多い。
性欲(リビドー)の低下は加齢とともに起こりやすくなるが、様子を見てもよい場合がある変化と受診すべき変化がある。この記事では原因・EDとの違い・改善策を薬剤師目線で整理する。
性欲低下とEDの違い
まず混同しやすい2つを整理しておく。
| 性欲低下 | ED | |
|---|---|---|
| 定義 | 性的欲求(リビドー)が減少する | 勃起が困難・維持できない |
| 性欲の有無 | 欲求自体が乏しい | 欲求はあるが勃起できない |
| 主な原因 | テストステロン低下・ストレス・抑うつ | 血管・神経・心理的要因 |
| 関係 | 同時に起こることも多い | 同時に起こることも多い |
性欲はあるのに勃起できない場合はED。欲求自体がわかない場合は性欲低下。両者が重なるケースも多く、テストステロン低下が共通の背景になりやすい。
男性の性欲低下の主な原因
① テストステロンの低下(代表的な原因)
テストステロンは性欲・筋肉・気力・骨密度を維持する男性ホルモンだ。分泌のピークは一般的に20〜30代とされているが個人差があり、30代以降は緩やかに低下していく傾向がある。総テストステロンは加齢とともに緩やかに低下し、一般的に年1%前後低下するとされている。
テストステロンが低下すると:
- 性欲(リビドー)が減退する
- 疲れやすくなる・気力が低下する
- 集中力・判断力が落ちる
- 体脂肪が増えやすくなる
- 朝立ちが減少・消失する傾向がある(ただし朝立ちの減少はテストステロン低下のサインとして知られるが、睡眠障害やEDなど他の要因でも起こりうる)
これらが重なって現れる場合は、LOH症候群(男性更年期障害)の可能性がある。
② ストレス・睡眠不足
強いストレスがかかると副腎皮質からコルチゾールが分泌される。コルチゾールはテストステロンの産生を抑制する方向に関与すると考えられており、慢性的なストレスや睡眠不足はテストステロン低下を介して性欲を下げる可能性がある。
仕事・育児・家庭のプレッシャーが重なる30〜40代に性欲低下が増えやすい背景の一つだ。
③ 薬の副作用(薬剤性)
以下の薬剤では性欲低下が副作用として報告されている。
- 抗うつ薬(SSRI・SNRI):最も頻度が高い
- AGA治療薬(フィナステリド・デュタステリド):性欲低下や勃起機能低下が添付文書上で報告されているが、頻度は高くない
- 降圧薬(β遮断薬・利尿薬など)
- 抗アンドロゲン薬
- 前立腺治療薬
④ 生活習慣病・基礎疾患
以下の疾患もテストステロン低下・性欲低下と関連することがある。
- 糖尿病(インスリン抵抗性がテストステロン産生に影響)
- 肥満(脂肪細胞がテストステロンをエストロゲンに変換)
- 高血圧・脂質異常症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺機能低下症
⑤ 心理的要因
うつ病・抑うつ状態は性欲を著しく低下させる。パートナーとの関係問題・セックスへの義務感・過去のトラウマなども関与することがある。
性欲低下セルフチェック
以下の項目に3つ以上当てはまる場合、LOH症候群(男性更年期)や他の原因が関与している可能性がある。
- 最近、性的な興味・関心が明らかに減った
- 朝立ちが減った・なくなった
- 疲れやすくなった・気力が続かない
- 以前より筋肉が落ちた・体脂肪が増えた
- イライラしやすくなった
- 集中力が続かない
薬剤師が見ていて40代に多いパターン
調剤薬局で相談を受けていると、40代の性欲低下には以下が重なっているケースが多い印象だ。
- 慢性的な睡眠不足(仕事・育児の影響)
- 蓄積したストレス
- 運動不足による内臓脂肪の増加
- 男性更年期(LOH症候群)の見落とし
いずれも「年齢のせい」と片付けられがちだが、原因に合ったアプローチで改善が期待できるケースは多い。
受診すべきサイン
以下に当てはまる場合は放置せず受診を勧める。
- 数週間〜数ヶ月で急激に性欲が低下した
- 朝立ちがほとんどない・消失している
- 強い疲労感・気力の著しい低下が続く
- 抑うつ症状がある
- 30代以下での発症
なお30代以下でも上記の症状が複数重なる場合は、若年性の内分泌疾患などが隠れている可能性があるため、年齢に関係なく受診を検討してほしい。
自分でできる改善策
睡眠を確保する
7時間以上の睡眠がテストステロン維持に重要とされている。睡眠不足はコルチゾール上昇→テストステロン低下の連鎖を引き起こしやすい。
筋力トレーニング
複数の研究で、特に筋力トレーニング(特に大筋群を使う複合種目)がテストステロン分泌を一時的に高めることが示されている。週2〜3回を目安に継続することが有効とされている。
節酒・禁煙
過度の飲酒は肝臓でのテストステロン代謝を促進し、血中濃度を下げる可能性がある。喫煙も血管機能を低下させ性機能に影響する。
適切な体重管理
肥満はテストステロンをエストロゲンに変換する脂肪細胞の量を増やすため、内臓脂肪の蓄積は性欲低下と関連する傾向がある。食事改善と運動の組み合わせが有効だ。
テストステロンと栄養素・サプリメント
亜鉛・ビタミンDなど一部の栄養素はテストステロン産生に関与しているとされており、不足している場合の補充は意味がある可能性がある。
ドラッグストアでよく見かけるマカ・トンカットアリ・アルギニンなどは、テストステロンを直接増やすエビデンスは限定的だ。血流改善や滋養強壮を通じて活力をサポートする目的で使われることが多いが、医薬品ではないため効果の程度には個人差がある。詳しくは別記事で解説している。
LOH症候群(男性更年期)と診断された場合は、テストステロン補充療法(TRT)が選択肢になる。ただしTRTには前立腺疾患・多血症・不妊などの注意点があり、医師の診察と血液検査による適応の確認が必要となる。詳細は別記事で解説している。
まとめ
- 男性の性欲低下はテストステロンの緩やかな低下が主因のことが多い
- 性欲低下とEDは別の現象だが、同時に起こることも多い
- 薬の副作用(特にSSRI・AGA治療薬)による性欲低下も見逃しやすい
- 急激な低下・朝立ち消失・気力低下を伴う場合は受診が必要
- 睡眠・筋トレ・体重管理が生活習慣での改善に有効
- LOH症候群の場合はテストステロン補充療法が選択肢
「年齢のせいだから仕方ない」と思い込んで放置するより、原因を把握してアプローチする方が生活の質は上がる。気になるなら血液検査で確認できることがある。
よくある質問
Q. 男性の性欲はいつ頃から低下し始めますか?
A. テストステロンの分泌は20〜30代でピークを迎え、30代以降は緩やかに低下していく傾向があります。加齢以外にもストレス・睡眠不足・生活習慣病なども関与することがあります。
Q. 性欲低下とEDは同じですか?
A. 別の現象です。性欲低下はリビドーが減少する状態で、EDは性欲があっても勃起が困難な状態です。ただし両者が同時に起こることも多く、テストステロン低下が共通の背景になるケースがあります。
Q. 性欲低下は病院に行くべきですか?
A. 急激な性欲低下・気力や集中力の低下・抑うつ症状・朝立ちの消失などを伴う場合は、LOH症候群や他の疾患が背景にある可能性があり、受診を勧めます。
Q. 薬の副作用で性欲が低下することはありますか?
A. あります。抗うつ薬(SSRI)・降圧薬・AGA治療薬(フィナステリド・デュタステリドなど)などで性欲低下が報告されています。服薬中の場合は自己判断で中止せず医師に相談してください。
Q. 性欲低下を改善する方法はありますか?
A. 生活習慣の改善(睡眠確保・筋トレ・節酒・禁煙)がテストステロン維持に有効とされています。LOH症候群と診断された場合はテストステロン補充療法が選択肢になります。
Q. テストステロンを増やすサプリメントは効果がありますか?
A. 亜鉛・ビタミンDなど一部の栄養素はテストステロン産生に関与しているとされています。ただし医薬品ではないため効果の程度には個人差があり、根本治療にはなりません。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。治療については医師にご相談ください。