バルデナフィルを薬剤師が徹底解説|3剤最速の吸収・QTcへの注意点
監修:現役薬剤師(調剤薬局長・薬剤師歴18年)
バルデナフィルは、先発品「レビトラ」が2021年に販売中止となり、現在はジェネリック(後発品)のみが流通しているED治療薬です。「名前をあまり聞いたことがない」という方も多いかもしれませんが、3剤の中で最も速く吸収されるという特徴を持ち、即効性を重視する方に向いている薬です。
この記事では、医薬品の添付文書やインタビューフォームをもとに、薬剤師目線でバルデナフィルの効果・副作用・飲み方・注意点を正確にお伝えします。
この記事でわかること
- バルデナフィルが「3剤最速」と言われる理由
- 先発品レビトラが販売中止になった経緯
- QTc延長という他の2剤にない注意点
- 透析患者には禁忌である理由
- ジェネリックの種類と選び方
バルデナフィルとは
バルデナフィルは、もともとバイエル薬品が「レビトラ」という名前で販売していたED治療薬です。一般名はバルデナフィル塩酸塩水和物といい、バイアグラ・シアリスと同じPDE5阻害薬に分類されます。
なぜレビトラは販売中止になったの?
2021年10月、バイエル薬品がレビトラ錠の販売中止を発表しました。これは薬の効果や安全性に問題があったわけではありません。 製造工場の問題や特許切れによるジェネリックの普及など、製造・供給面の事情が重なったためとされています。
実は日本でのレビトラは世界トップクラスのシェアを誇るほど人気がありましたが、先発品が消えた今はジェネリックのみが流通しています。沢井製薬・東和薬品など複数メーカーから「バルデナフィル錠」として販売されており、先発品と同じ有効成分・効果があります。
バルデナフィルはどうやって効くの?
バイアグラ・シアリスと同じく、性的な興奮があると陰茎の血管が広がり、その状態を維持して血流を保つことで勃起をサポートする薬です。
性的な興奮がなければ効果は出ません。精力剤や媚薬とは根本的に異なります。
用量・飲み方
| 規格 | 飲み方 |
|---|---|
| 10mg・20mg | 性行為の約1時間前に1錠 |
- 通常は10mgから開始し、効果が不十分な場合は20mgに増量
- 1日1回まで、間隔は24時間以上あけること
- 高齢者(65歳以上)・中等度の肝障害がある方は5mgから開始、最高10mgまで
吸収の速さ【最大の特徴】
バルデナフィルを語るうえで最も重要なのが、吸収の速さです。
日本人健康成人を対象にしたIFデータによると、薬の血中濃度がピークに達するまでの時間(Tmax)は以下のとおりです。
| 薬剤 | Tmax(ピークまでの時間) |
|---|---|
| バルデナフィル | 約0.75時間(約45分) |
| バイアグラ | 約0.8〜0.9時間(約1時間) |
| シアリス | 約3時間 |
3剤の中で最もTmaxが短く、最速で血中濃度がピークに達します。
「早く効かせたい」「急なシーンでも対応したい」という方には、この吸収の速さが大きなメリットになります。
食事の影響
標準的な食事(脂肪分30%程度)後の服用では、AUC・Cmaxともに食事による影響は確認されていません。ただしこれは「標準的な食事」でのデータです。極端に脂肪分の多い食事のデータは限られているため、できれば食事から少し時間をあけてから服用するのが安心です。
効果の持続時間
消失半減期(T1/2)は約3〜4時間で、効果が持続する時間の目安は4〜5時間程度です。バイアグラとほぼ同等で、シアリスの36時間と比べると短くなります。
「必要なときだけ、すっきり使いたい」という方には、この持続時間がちょうどいいと感じるケースもあります。
バルデナフィルが選ばれる理由
「とにかく早く効かせたい」方に
Tmaxが約45分と3剤最速という特徴は、急なシーンや「できるだけ準備時間を短くしたい」という方に向いています。
直接比較試験でバイアグラより優れた項目も【研究データ】
2006年にThe Journal of Sexual Medicineに掲載された直接比較試験(1,057人対象・糖尿病・高血圧・高脂血症などのリスク因子を持つED患者、クロスオーバー法)では、バルデナフィル20mgとバイアグラ100mgを実際に比較した結果、バルデナフィルが勃起機能スコアや総合満足度などの複数の指標でバイアグラを統計的に上回る結果が示されました(J Sex Med 2006;3:1037-1049)。
患者の選好については、バルデナフィルを好んだのが38.9%、バイアグラを好んだのが34.5%と、わずかながらバルデナフィル優位という結果でした。
ただし、これは「バルデナフィルが常に最強」ということではありません。別のメタ解析では3剤の効果に大きな差はないとする結論も多く、体感の違いには個人差が大きいというのが正直なところです。「硬さ・維持力を重視したい」方の選択肢として根拠のある薬と言えます。
糖尿病EDにも比較的強いデータがある
上記の比較試験は糖尿病を含むリスク因子を持つ患者を対象としており、そのような合併症がある方でもバルデナフィルの有効性が示されています。IFの国内臨床試験でも糖尿病合併ED患者でのIIEFスコア有意改善が確認されています。
半錠に割って用量調整できる
バルデナフィルのジェネリックは中央に切れ目が入っており、錠剤を半分に割ることができるものが多いです。「20mgは多すぎる気がする」「副作用が心配で量を抑えたい」という場合に、細かな用量調整がしやすいのは実用的なメリットです。
バルデナフィルの弱点も正直にお伝えします
- シアリスと比べると持続時間が短い(約4〜5時間)
- QTc延長という他の2剤にない制限がある(不整脈薬を飲んでいる方は使用不可)
- 透析患者には禁忌(他の2剤は慎重投与で使用可)
- OD錠がない(水なしで飲める剤形が存在しない)
「長時間効かせたい」「タイミングを気にしたくない」という方はシアリスが、「とにかく実績重視・効いた感を確認したい」という方はバイアグラが向いているケースもあります。
有効率
外国で実施された第Ⅲ相試験のデータによると、バルデナフィルの有効率は以下のとおりです。
| 評価指標 | プラセボ | 5mg | 10mg |
|---|---|---|---|
| 挿入の成功率 | 51.7% | 65.5% | 75.5% |
| 勃起の持続率 | 32.2% | 50.6% | 64.5% |
また、糖尿病を合併するED患者を対象にした国内臨床試験でも、バルデナフィル10mg・20mgともにプラセボに対して有意な改善が示されています。
副作用
よく出る副作用
| 副作用 | 頻度 |
|---|---|
| ほてり | 10.6% |
| 頭痛 | 11.7% |
| めまい | 1%以上 |
| 鼻閉 | 1%以上 |
| 背部痛・筋肉痛 | 1%以上 |
彩視症(青視症)について
バイアグラで起こりやすい「ものが青っぽく見える」という視覚的な副作用ですが、バルデナフィルでも頻度は低いながら報告されています。シアリスよりは頻度が高く、バイアグラよりは低い傾向とされています。
知っておきたい副作用
勃起が4時間以上続く場合はすぐに受診
まれに勃起が長時間続くことがあります。4時間以上続く場合は、速やかに泌尿器科を受診してください。
突発性難聴
ごくまれに、急激な聴力低下が報告されています。耳鳴りや聞こえにくさを感じたら服用を中止し、すぐに耳鼻咽喉科へ。
バルデナフィル固有の注意点【他の2剤とは異なります】
バルデナフィルには、バイアグラ・シアリスにはない特有の注意事項が2つあります。これは薬を選ぶうえで非常に重要な情報です。
① QTc延長に注意
バルデナフィルは服用後に心電図のQTc間隔がわずかに延長することが臨床試験で確認されています(10mgで平均8msec延長)。
これは、不整脈の薬との併用が禁忌になっていることを意味します。
以下の薬を飲んでいる方は、バルデナフィルは使用できません:
- クラスIA抗不整脈薬(キニジン、ジソピラミドなど)
- クラスIII抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロールなど)
- 先天性QT延長症候群の方
不整脈の治療を受けている方は、ED治療薬を選ぶ際に必ず医師に相談してください。バイアグラやシアリスにはこの制限がありません。
② 血液透析患者には禁忌
バルデナフィルは、血液透析が必要な腎障害のある方には禁忌とされています。
バイアグラ・シアリスは透析患者でも慎重投与(量を減らして使用可)ですが、バルデナフィルは安全性が確立されていないため、透析患者への投与が禁じられています。透析を受けている方はバイアグラまたはシアリスを選ぶ必要があります。
飲んではいけない人・注意が必要な人
絶対に飲んではいけない場合
狭心症の薬(硝酸剤)を飲んでいる方は絶対に服用しないでください。
ニトログリセリン・ニコランジルなどの狭心症薬と一緒に飲むと、血圧が急激に下がり、死亡事例も報告されています。
その他の禁忌:
- 重度の肝機能障害がある方
- クラスIA・クラスIII抗不整脈薬を飲んでいる方(バルデナフィル特有)
- 血液透析が必要な方(バルデナフィル特有)
- 最近6ヶ月以内に脳卒中・心筋梗塞を起こした方
- 低血圧または管理できていない高血圧の方
- 不安定狭心症のある方
- 網膜色素変性症の方
- リオシグアト・強いCYP3A4阻害薬(リトナビル・イトラコナゾール等)を飲んでいる方
用量を減らして慎重に使う必要がある方
高齢者(65歳以上) → 5mgから開始、最高10mg(血中濃度が若い方の約1.3〜1.5倍に上昇)
中等度の肝機能障害がある方 → 5mgから開始、最高10mg(AUCが健康成人の約2.3〜2.6倍に上昇)
腎機能障害のある方 → AUCは約1.2〜1.4倍の上昇。用量調整は原則不要だが慎重に
一緒に飲むと危険な薬
| 薬の種類 | 注意内容 |
|---|---|
| 硝酸剤(ニトログリセリン等) | 絶対NG |
| 抗不整脈薬(クラスIA・III) | 絶対NG(バルデナフィル特有) |
| 抗真菌薬・HIV薬(リトナビル等) | 絶対NG(血中濃度が最大49倍に) |
| マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン等) | 血中濃度が上昇(5mg以下に制限) |
| 前立腺肥大の薬(α遮断薬) | 血圧が下がりすぎるおそれ |
リトナビル(HIV治療薬)との併用でバルデナフィルのAUCが49倍、Cmaxが13倍に上昇するというデータがあります。HIV治療中の方は必ず医師に相談してください。
ジェネリックの種類
現在流通している主なバルデナフィルのジェネリックは以下のとおりです。
| メーカー | 製品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 沢井製薬 | バルデナフィル錠「サワイ」 | 10mg・20mg、半錠に割れる切れ目入り |
| 東和薬品 | バルデナフィル錠「トーワ」 | 10mg・20mg |
| 日医工 | バルデナフィル錠「ニチイコ」 | 10mg・20mg |
いずれも有効成分・効果は同等です。OD錠(水なしで飲めるタイプ)のバルデナフィルは現時点では存在しません。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 飲むタイミング | 性行為の約1時間前 |
| 最大の特徴 | 3剤最速の吸収(Tmax約45分) |
| 食事の影響 | 標準的な食事では影響なし |
| 効果の持続 | 約4〜5時間 |
| 有効率 | 挿入成功率:10mgで約76% |
| 特有の注意点 | 不整脈薬との併用禁忌・透析患者禁忌 |
| 最重要 | 硝酸剤との併用は絶対禁忌 |
バイアグラやシアリスと何が違うのか、自分に合う薬を知りたい方はこちらも参考にしてください。
- → バイアグラ(シルデナフィル)徹底解説|食事の影響・硬さの実感・使用実績25年
- → シアリス(タダラフィル)徹底解説|36時間持続・食事の影響なしの理由
- → ED治療薬3種類を薬剤師が徹底比較|バイアグラ・シアリス・バルデナフィル
免責事項 この記事は医薬品の添付文書・インタビューフォームに基づく情報提供を目的としており、医師・薬剤師による診察・指導に代わるものではありません。ED治療薬は処方箋医薬品です。必ず医療機関を受診のうえ、医師の処方に従って服用してください。