マカは本当に精力に効くのか?薬剤師がエビデンスを正直に評価
「マカ」は精力増強サプリの定番成分として長く知られており、「飲んだら元気になった」という声も多い。一方で「テストステロンが増える」「EDに効く」といった過剰な宣伝文句も目立つ。
では実際のところ、どのくらい効くのか。薬剤師の立場から、論文データをもとに正直に評価する。
マカとは何か
マカ(Lepidium meyenii)はペルー・アンデス原産のアブラナ科の植物で、根の乾燥粉末やエキスがサプリメントとして使われている。主な成分はグルコシノレートやマカミドなどの独自成分で、アミノ酸・ミネラルも含む。ただし作用機序(どのように体に作用するか)は現時点でまだ完全には解明されていない。
リビドー(性欲)への効果:一定のエビデンスあり
マカの効果のなかで、もっともエビデンスが蓄積されているのが「リビドーの改善」だ。
2002年に発表された二重盲検プラセボ対照RCT(PMID: 12472620)では、21〜56歳の健康な男性57名を対象に、マカ(1,500mg/日または3,000mg/日)とプラセボを12週間比較した。結果として、8週目以降にマカ群で性的欲求の改善が示された。注目すべきは、この効果がテストステロン値の変化とは無関係だった点で、マカはテストステロン以外の経路でリビドーに作用している可能性が示唆されている。
2010年のシステマティックレビュー(PMID: 20691074、Shin et al.)では4本のRCTをまとめ、「性機能・性欲改善に対する限定的なエビデンスが存在する」と結論づけている。試験の規模・数ともにまだ十分ではなく、より大規模な検証が必要な状況だ。
EDへの効果:軽度EDには一定の可能性、中等度以上には不十分
EDへの効果についても研究が存在するが、評価はさらに慎重になる必要がある。
2023年に発表されたメタ解析(Lee et al., Journal of Men’s Health, 2023; DOI: 10.22514/jomh.2023.003)では、軽度EDの男性を対象とした2本のRCT(合計79名)を解析し、マカ群でEF(勃起機能)スコアの改善が示された。しかし著者らは「試験数・サンプルサイズが不十分であり、確固たる結論を出せる段階にない」と明記している。
中等度〜重度のEDに対してマカが有効であることを示す十分なエビデンスは現時点で存在しない。マカはあくまでサプリメントであり、PDE5阻害薬(バイアグラ等)とは作用機序もエビデンスの強さもまったく異なる。EDの症状が気になる場合は医療機関への受診が先決だ。
ED治療薬については「ED治療薬3種類比較」を参照してほしい。
テストステロンへの影響:「増える」は誤り
マカのパッケージや広告に「テストステロンをサポート」という表現がよく見られる。しかしこれは現時点の研究データとは一致しない。
2003年の二重盲検RCT(PMID: 12525260、Gonzales et al.)では、マカ(1,500mg/日または3,000mg/日)を12週間摂取しても、テストステロン・LH・FSH・プロラクチン・エストラジオールなど性ホルモン全般に統計的な変化は認められなかった。
また細胞レベルの研究(PMID: 16239088)では、マカ抽出物にアンドロゲン受容体への結合能がないことが示されており、「マカが直接テストステロン様作用を持つ」という仮説は否定的なデータが出ている。
マカのリビドー改善メカニズムの仮説
テストステロンを変えないのになぜリビドーが改善するのか、現在いくつかの仮説が検討されている。
- グルコシノレート・マカミドによる神経系への作用:独自成分が神経伝達物質の調整に関与している可能性
- 抗酸化・抗疲労作用:慢性的な疲労や酸化ストレスの軽減がリビドー改善に寄与している可能性
いずれも仮説段階であり、確立されたメカニズムは現時点では不明だ。
なぜ「効いた気がする」人が多いのか
マカを試した人の中に「なんとなく元気になった」「性欲が戻った気がする」という感想を持つ人は少なくない。ただし、これにはいくつかの要因が絡んでいる可能性がある。
リビドーは主観的な評価に依存する部分が大きく、サプリメントの臨床試験ではプラセボ群でも改善が見られることが珍しくない。また「何か飲んでいる」という安心感による期待効果、疲労回復感や睡眠の改善が間接的にリビドーに影響している可能性もある。
「飲んだら効いた」という実感がすべて偽りというわけではないが、それがマカの薬理作用によるものかどうかは慎重に見極める必要がある。
副作用・安全性
臨床試験の範囲では、マカの副作用は比較的軽微だ。消化器症状(膨満感・軟便)が出ることがある程度で、重篤な有害事象の報告は少ない。体質に合わない感じがあれば使用を中止し、医師や薬剤師に相談すること。
ただし以下の点には注意が必要だ。
甲状腺疾患がある場合:マカはゴイトロゲン(甲状腺ホルモンの合成を妨げる可能性がある成分)を含む報告がある。通常のサプリ量で大きな問題が起きるというエビデンスは限られているものの、甲状腺機能に問題がある方は主治医に相談してから使うこと。
長期・高用量摂取のデータが少ない:ほとんどの臨床試験は12週以内であり、長期使用の安全性は確立されていない。
サプリメントは医薬品と異なり品質管理が製品によってばらつきがある。含有量や純度の保証がない製品も流通している。
飲むタイミングについて:マカは医薬品ではないため、服用時間に厳格な決まりはない。ただし胃腸への負担を考慮すると食後に分けて飲むのが無難だ。「夜に飲むと目が冴える」という声もあるため、気になる場合は朝や昼の食後に試してみるとよい。
製品を選ぶときの注意点
市販のマカサプリは品質にばらつきがある。選ぶ際は以下を確認してほしい。
- 1日量あたりのマカ含有量が明記されているか:「マカ配合」と書いてあっても含有量が極めて少ない製品も存在する
- 過剰なブレンド品に注意:多数の成分を混ぜた製品は、何が効いているか(あるいは効いていないか)が判断できない
- GMP認定工場での製造か:品質管理の基準として参考になる
マカが向いている人・向いていない人
薬剤師としての総合評価
| 評価項目 | 評価 | エビデンスの現実 |
|---|---|---|
| リビドー(性欲)改善 | △〜◎ | 限定的だが、健康な男性での改善を示すRCTが存在する |
| ED改善(軽度) | △ | 軽度EDへの限定的なデータのみ。中等度以上には不十分 |
| テストステロン増加 | ✗ | 複数の臨床試験で「変化なし」と一貫して否定されている |
| 短期使用の安全性 | ◎ | 軽微な胃腸症状を除き、臨床試験の範囲では安全性が高い |
| ED治療薬の代替 | ✗ | 医薬品(バイアグラ等)とは作用機序もエビデンスの強さも別物 |
EDの治療については、PDE5阻害薬(シルデナフィル・タダラフィル)という有効性・安全性が確立された選択肢がある。オンラインクリニックを利用すれば自宅から手軽に相談できる。
オンラインクリニックの使い方は「オンラインクリニックの初診の流れ」を参照してほしい。
よくある質問
Q. マカを飲むとテストステロンが増えますか? 現時点の人間を対象とした研究では、マカを摂取してもテストステロン値は変化しないことが複数の臨床試験で確認されています。マカによるリビドー改善はテストステロンを介さない別のメカニズムによると考えられています。
Q. マカはEDに効果がありますか? 軽度EDの男性を対象とした小規模な研究では、一定の改善が示されています。ただし試験数・対象者数ともに少なく、バイアグラなどPDE5阻害薬と同等の効果があるとは言えません。中等度以上のEDには医療機関の受診をすすめます。
Q. マカはどのくらいの量・期間飲めば効果が出ますか? リビドーへの効果が確認された臨床試験では1,500〜3,000mg/日を8〜12週間継続するデザインが多く使われています。短期間の使用で劇的な変化を期待するのは難しいと考えられます。
Q. マカに副作用はありますか? 臨床試験の範囲では重篤な副作用の報告は少なく、一般的に忍容性は高いとされています。ただし胃腸症状(膨満感・軟便)が出ることがあります。甲状腺疾患がある方は主治医に相談のうえ使用することをすすめます。
Q. マカとED治療薬(バイアグラ等)の違いは何ですか? バイアグラ(シルデナフィル)などPDE5阻害薬は、血管拡張作用により勃起を直接サポートする医療用医薬品で、有効率は国内承認試験で70〜80%以上です。マカはサプリメントであり、作用機序・エビデンスの強さがまったく異なります。
Q. マカは日本でも買えますか? マカはサプリメントとして国内で広く流通しており、ドラッグストアやネット通販で入手できます。医薬品ではないため、品質や含有量は製品によって異なります。